SONY ICF-SW7600GR

ソニー7600シリーズの最新機です。とはいえ2001年5月10日の発売なので、もう発売から既に15年以上経過しています。

【追記】 本機は2018年2月に生産を終了しました。約17年の長きに亘り製造され唯一残っていたこのラジオの生産終了を以て国産短波ラジオも遂にその歴史に幕を下ろしたといっていいでしょう。

ラジオというのは枯れた技術であり、もう殆ど改良する部分がないので、発売時期が古くても大した問題ではありません。却ってロングランの製品なので部品供給が継続しており、故障したとしても容易に修理ができ安心できます(この点、中華ラジオは事実上使い捨てです)。因みに、私が所有している同社の名機ICF-5900は本機よりも更に古い時代の製品ですが、感度はICF-SW7600GRと互角に渡り合える程の実力を持っています。需要の少ない分野で新製品を出すにはそれだけコストがかかる(製品の値段が上昇する)のでソニーの中級(上位機種の生産終了により現在は最上級)BCLラジオとしては本機が最終製品となるのではないでしょうか。近年、ソニーの短波ラジオは数が減ってしまい、本機の上位機種としては残念ながら既にICF-SW07しか残っていません(ICF-SW07は既に生産終了しました。ワールドバンドレシーバーで残っているのは本機とICF-SW35ICF-SW11だけになりました)。本機(7600GR)は定価が42000円で、実売価格が30000円程度と中国製ラジオに比べれば随分割高な感じはしますが、日本国内に於ける短波受信機の需要が非常に少ないことと、部品点数が多くしっかりした作りでしかも国内製 ということを考えれば決して高くはありません。今時珍しい国産品(ソニーから製造委託されている十和田オーディオ株式会社製)で、製品数が多く性能を上げてきた中華ラジオと比べても実に堅実で貴重な存在です(中華ラジオメーカーは人気機種の生産を突然やめてその後は凡庸なラジオしか作らなくなったり、メーカー自体が消滅したかと思うと秘かに名前を変えて別メーカーになっていたりと存在自体が非常に不安定ですし、性能の良くない安価な中国製部品を使っていたりするので耐久性に難ありです)。商売的に難しい中で、しかもインターネットのストリーミング放送が多くなりアナログ短波放送がレガシーメディアとなりつつある現在、よく作り続けてくれているとさえ思います。私の場合、安い中国製ラジオというのは買った当初は面白がってよく使うのですが、そのうちに飽きてきて結局安定した性能の製品に落ち着きます。DE1103などのダイアル選局には確かに魅力があるのですが、総合的な性能を考えると、多少不便なプッシュボタン式でもこちらを使う頻度が増し、既にDE1103は事実上お蔵入りしています。折角の「趣味」ですし、あまりお金をケチると心まで貧しくなるような気もしますしね。まあ、要するに価値観の問題なので、私の場合はこうですよというだけのことなんですが、もしも私の物言いが不愉快でしたらお詫びします。すみません。

さて、ICF-SW7600GRを手にして先ず感じることは、BCLラジオとしてのバランスが非常によいということです。回転ダイアル式ではないものの、1kHzステップと5kHz(中波は9kHz)ステップという2段階の選局ボタンがあり、短波放送受信では5kHz(中波帯では9kHz)ステップ、SSBなどでは1kHzステップと用途に応じて使い分けが出来ます。勿論、テンキーによるダイレクト選局も出来ますし周波数メモリーもテンキーから直接呼び出せます。中波帯では10kHzステップに設定変更することも可能です。このラジオの凄いところは何といっても同期検波回路を装備していることでしょう。7600GRの選択度そのものは、DE1103のNarrowモードとほぼ同等と感じました(しかし音質はDE1103より格段によい)。更に同期検波回路を使用することにより、通常では分離できない混信を音質を落とさずにキッチリと分離することが来ます(勿論、全てのケースで有効なわけではなく、条件によっては分離できない場合もありますが)。この巧みな機能は本当に 晴らしいですし、この同期検波だけでも「買い」のラジオです。その他に特筆すべきはSSB受信のしやすさとその安定度です。特に安定度は抜群で、一度復調の最適点に合わせたら後はずれることなくそのままずっと安定しています。FMや中波の感度も申し分なく非常に高性能だと思います。内蔵スピーカーの音質は決してハイファイではありませんがそれでも充分に音楽を楽しめる音質で、中華製ラジオのように長時間聴くのが苦痛になるようなことはありません。本体の仕上げに関してもちゃんと精度を維持しています(中華ラジオはぱっと見よく出来ているような気がしますが細部を見るとやっぱり雑です。普段は見る事のないプリント基板などは半田付けの技術が良くない上に使っている半田も低品質で色がくすんでおりジャンパー線などは被覆の内側まで錆びていたりします。基板表面も指紋だらけで得体の知れない粉がびっしりとついていたりすると、もしかしたら毒物かも知れないと思ってぞっとします)。このような製品にコストがかかるのは当然のことで、勿論、7600GRが最高というつもりは毫もありませんが、安価が取り柄である中国製品を基準に考えてしまうと物事の本質を見失うのではないかと思います。本機は外国では日本よりも更に安価で販売されているようです。こういった現象は別に珍しいことではなく、アナログ・オーディオ関連でもよく目にします。ラジオにしろアナログオーディオにしろ、外国ではまだ多くの需要があるという事です。熱しやすく冷めやすい日本人とは異なり、外国(欧米)人は細く長く同じ趣味を長期間続けている人が多いようですね。話がずれてしまいましたが、私にはこれ以上の性能は必要ありませんから、この先ずっと7600GRを使い続けながら、懐かしい往年のBCLラジオをも弄ることになると思います。

2018年9月1日更新