このカメラは、ハーフ判が廃れてしまって久しかった時代に突如として(笑)登場したコンパクトカメラです。当時は京セラのハーフ版カメラ「サムライ」がヒットしていたのでそれの影響を受けたのかも知れません。前面のダイアルで、広角と望遠の2種類を切り替えて撮影します。特に望遠は、わざわざ2枚のミラーに反射させて焦点距離を稼ぐという凝った造りになっています。勿論、この方法は画質的には不利ですが、もともとそれ程画質を重視していないハーフ判ということもあって、「余り細かい事は気にしないで望遠と広角を気軽に切り替えて沢山写真を撮ろう!」というコンセプトだったのだろうと思います。ミラーで反射するという構造は同じフジの一眼レフインスタントカメラMX900ACEなどにも使われています。その他に面白いのは、TVモードというのがあって、これはシャッタースピードを正確に1/30秒(通常は1/32秒なので画面とシンクロ出来ない)で動作させる事によって走査線の影を排除して綺麗にテレビ画面を写す事が出来るというもので、実際に綺麗に写りました。余談ですが、リコーのコンパクトカメラにもこのTV撮影機能を装備しているものが多かったですね。フジのコンパクトカメラはレンズが良いので基本的に画質が良いものが多く、このカメラも怪しげな外観や機構とは裏腹に、出来上がったプリントはハーフ判と云う事を差し引いても充分満足のいくものです。枚数はフルサイズの倍も撮れますが、後々のプリント(膨大な枚数)の事を考えると出費が恐ろしくて、殆ど12枚撮りフィルムばかりを装填して使っていました。(笑)
さて、このカメラの唯一の欠点は、サービスステーションでなければ電池交換が出来ない事です。古いカメラですから勿論既に電池は切れています。恐らく、サービスステーションでも電池交換を受け付けてくれないだろうと思ったので、ダメもとで自分で電池を交換する事にしました。先ず、裏蓋の膨らんだ部分に電池が収納されているだろうと予想して、留めているビスを外してカバーを外すと、果たせる哉黄色い円筒形の電池が入っており、型番を見ると松下電池のBR-2/3A TL2F 6Vという積層タイプのリチウム電池でした。
取り外したリチウム電池
早速メーカーサイトで同じものがないかどうか検索してみたのですが該当するものが全く引っかからないので既に生産終了したのでしょう。電池のタブにリード線が直接半田付けしてあったので、半田鏝がカメラ本体のプラスチック部分に直接触れないように厚紙でカバーし、熱に気をつけながら外します。リード線の途中には電池と密着するように温度ヒューズがついていましたが、これはリチウム電池が万一過負荷状態になって過度に熱をもってしまった時に電流を遮断する安全装置です。同じ規格の電池が入手出来そうにないので、「困ったなぁ」と思いながら手許にあるカメラ用のリチウム電池の大きさを比べてみるとCR-2だと小さすぎましたが、CR123の2本直列だと丁度いいようです。元々電池に付いていたタブをペンチで引きはがして接点として再活用することにしてリード線に再度半田付け。CR123を2本直列に繋いでテープで固定し、接点を電池にかまして元に戻しました。電源を入れるとファインダー下のランプ(LED)が点灯してストロボの充電が始まり、カメラが動き始めました。何度やってもこういう瞬間は嬉しいものですね。(^^) フィルム確認窓のモルトも傷んでいたので張り替えました。その後は全く正常に使えています。
オリジナルのソフトケース
● 主な仕様(説明書より)
使用フィルム |
135ロールフィルム(DXマーク付) |
画面サイズ |
17×24mm |
レンズ |
望遠 f=69mm 1:8 |
ファインダー |
望遠:アルバダ式(ブライトフレーム)等倍 |
表示(接眼部) |
連続撮影ランプ/電池チェックランプ |
距離調節 |
望遠:3点ゾーンフォーカス 4m~∞ |
シャッター |
フロント式、プログラム電子シャッター、ツインタイプ、1/30~1/500秒、電磁レリーズ |
露光調節 |
ステップ式プログラムシャッター F8 1/30秒~F16 1/500秒(EV11~17) 逆光補正可能 |
フィルム感度 |
自動セット(DX方式) ISO100~1600 |
フィルム装てん |
簡易装てん式 |
フィルム給送 |
電動モーター式 プレワインド方式(巻き戻し不要) 途中巻き戻し可能 |
フィルムカウンター |
プレワインド式により撮影可能枚数自動セット(残数表示) フィルム走行表示兼用 |
内蔵ストロボ |
広角撮影時自動発光 広角レンズセット時ポップアップ |
撮影距離 |
ISO100:0.5~1.8m ISO400:0.5~3.5m ISO1600:0.5~7m |
発光間隔 |
約3秒 |
TV撮影 |
可能(シャッター 1/30秒、ストロボ発行禁止) |
近接撮影 |
可能(広角時0.5~1m) |
連続撮影 |
可能(ストロボ撮影不可) |
電池 |
内蔵 リチウム電池(2/3A)2本 広角時50%ストロボ撮影で、約1000コマ撮影可能 |
その他 |
フィルム確認窓付 レンズダイヤルによりシャッター安全ロック可能 |
大きさ・重さ |
113×84×41mm(横×高さ×厚さ) 280g |
取扱説明書
(これは当時サービスステーションで購入した実物です。
既に随分昔の製品なので説明書は実物ではなくコピーになるでしょうが、
フジフィルムのサービスセンターに依頼すれば実費で入手出来ると思います。)